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欧米の企業がデザインファームを買収する理由

「ブリッジング(bridging)」という言葉を聞いたことがあるだろうか。

 

 

前回の記事で書いたが、先日参加した『BRIDGING ブリッジング - 創造的チームの仕事術 -』の著者・広瀬郁氏と木下斉氏のトークイベントで、ぼくは初めてこの言葉を知り、興味をもった。

 

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 - peopledesign.or.jpより

広瀬 郁

株式会社トーン&マター代表取締役社長

東京生まれ。 東京理科大学 横浜国立大学大学院 建築専攻卒業。外資系経営コンサルティングファーム勤務を経て、2001年(株)都市デザインシステムに入社。 ホテル「クラスカ」ではコンセプトメイキングから事業企画・プロジェクト推進まで総合的なプロデュースを担う。 また事業再生ファンドに対して企画コンサルティングを展開。 2004年から執行役員として上海事業部を担当し、「ディアージュ」を総合プロデュース。 2008年株式会社トーンアンドマターを設立。 東京・札幌・福岡などで複数のホテル・商業施設の企画・ネーミング・デザインディレクションを手掛ける。 現在は上海万博で子供用施設の企画推進中。

 - idec.or.jpより引用

 

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▲イベント会場にて 

 

ブリッジングとは

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[Bridging; Bridge] ブリッジ、橋 

 

ブリッジングとはつまり「橋渡し」だ。

日本ではまだ馴染みのない言葉なのかもしれないが、この本ではその組織とクリエイターの橋渡しについて、組織側からの観点で広瀬氏が語っている。

 

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(以下、本書より抜粋) 

 ブリッジングとは、その事業やプロジェクトの条件に合うクリエイターを呼び込む方法です。メリットはたくさんあり、逆にデメリットはわずか。まだこのやり方が広がっていないのは、みんなが慣れていないだけだと思います。

 

クリエイターと手を組み、プロジェクトを立ち上げる。組織のもつ力を最大限に発揮しながら------。このシンプルだけど新しい仕事の進め方が、今までとまったく異なる新しい価値を生み出すはずです。

 

なぜ今、ブリッジングなのか 

正直なところ、多くの組織の人間はクリエイターと手を組むことについて「めんどくさい」と素直に思うだろう。

では、なぜ今の時代にわざわざ組織とクリエイターが手を組む必要があるのだろうか。

その問いに対する回答が以下だ。

 

カネやモノは、有形の資産。(中略)これまでの経営環境では、有形資産の増減だけに注力していればよかったのかもしれません。でも今は違う。欧米の大企業が知的財産を重視した経営戦略にシフトしつつあるのも、デザインファームを買収するといった動きがあるのも、有形資産だけでは厳しい時代に入っていることを裏付けています。

 

これからのビジネスでは、無形の資産がものを言う。アイデアやデザインといったクリエイターが得意とするアウトプットこそが、無形の資産にほかなりません。収益率の高い「資産」として、クリエイティブが経営に直結しつつあるのです。

 

つまり資金があっても、ハイスペックなマシンがあっても、そこにアイデアや創造性を持つ人が、つまりクリエイターがいなければ、イノベーションは起こりにくいということだ。

 

なぜなら、モノ余りの時代には(カネを含む)有形資産がコモディティ化して(溢れかえって)おり、有形の資産だけでは差別化することが大変難しい。

かつ、IT革命によって情報伝達のためのコストが劇的に下がっているおかげで、消費者が類似商品や事例を見つけやすくなっていたり、そのために組織の魅力が埋没しやすくなっている。 

 

ここでクリエイティブの出番となる。

オリジナリティと言い換えてもいいかもしれない。

自分たちだけの魅力(あるいは課題)を、組織とクリエイターががっぷり四つになって組むことで、発見(あるいは解決)できる。

 

 

ブリッジングプロジェクト3つの効果 

組織とクリエイターが結びつくことで以下の3つの効果が期待できると、著者は本の中で述べている。

 

  1. プロセス------“共に学ぶ”効果
  2. コモンセンス------“常識”が入ってくる効果
  3. カルチャー------染み付いた“文化”を変える効果

 

1.プロセス------“共に学ぶ”効果

ブリッジングプロジェクトは「アウトプットを金で買う」いわゆる外注とは違い、アウトプットが生み出されるまでのプロセスを共有することを重要視する。

本書で広瀬氏は「餅屋と一緒に餅をつくり食べる」と表現。

そうすることで、アウトプットを得られるだけでなく、プロジェクトが社内のノウハウやスキルの向上の糧になる。

 

2.コモンセンス------“常識”が入ってくる効果

ブリッジングプロジェクトの利点は、そもそも組織の輪郭からはみ出していることにある。

すぐれたクリエイターなら組織にある「大人の事情」にあえて気を使うことなく、「事業の意義や目的」に対して客観的な視点で、かつ真正面から向かい合う。

それが組織内に染み付いた(外からみた)非合理な常識を排することでリスクや無駄をなくし、新たなチャンスをつかむことにつながる。

 

3.カルチャー------染み付いた“文化”を変える効果

組織がクリエイターとプロセスを共に学ぶことは、言ってみれば体内に善玉菌を取り込むようなもの。それが組織の新陳代謝を促すことになる。

組織、企業の経営において、これからの時代に対応してゆくためには、今までのやり方を変えなければならない部分もあるかもない。

ブリッジングにはそんな「変えなければいけない部分」を変え、新たな組織文化をつくっていく効果があると著者は語る。

 

まとめ 

組織内にクリエイティブの芽が宿り、自浄作用をもちながら次の時代に進んでゆく。もしかすると、ブリッジングの効果は思っているよりも大きいのかもしれない。